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18.死ぬために生きているの
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 どうしてかといいますと、福岡の方で、30代の方が大腸癌になりまして、手術を受けたのだそうです。手術自体はうまくいった。しかし2年後に再発をして、手術をしてくれた外科の先生の所に行ったけど、痛みが十分に取れなかった。それでホスピスという、緩和ケアといって、モルヒネなどの麻薬を使って痛みをとってくれる先生の所に行ったら痛みが取れたのだそうです。しかし、お腹の癌だったものですから、入院中に腸閉塞になったのだそうです。しかし腸閉塞になりましても、私たちは、点滴とかで、飲まず食わずでも生きていく技術を持っていますから、痛みはモルヒネで取り除く、食べる部分は点滴でいけるようになってきた。そしたときに、この患者さんが,回診の時に、「先生、私は死ぬために生きているのですか」と訴えたというのです。これには、今までの医療者であれば、ほとんど答えることができません。「死ぬために生きているのですか」といわれても………、ここがスピリチュアルの領域なのです。今までは身体的・精神的・社会的だけで良かったのに、今いろんな技術が進んで出てきたときに、最後にスピリチュアルという、人間に生まれた意味・生きることの意味・生きることの物語・死んだらどうなっていくのかというスピリチュアルな面の訴えが露出して出てくるのです。それが今、終末期の医療の中で課題として、医療関係者が今戸惑っている領域なのです。このようなことから見えるように単なるエビデンスだけじゃなくて、物語ということをやはりもう一度考え直さないと、本当に人間としての健全とは云えないという時代性になっているということもであります。

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19.死後の世界に進む
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