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10.今、今日、ここ
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 このとこを、そうは言われてもと言うことになりましけれども、今、今日ということの大事さ、ということを仏法がどのように教えているかということを、もうすこし詳しくお話させていただきます。仏教で、それぞれの道を得た人たちが「今、今日が大事だ」と教えてくれているエピソードを2・3紹介します。
 鈴木大拙先生は臨済宗のお坊さんです、この人は聖路加病院の日野原先生が主治医だったので、日野原先生の本の中に、鈴木大拙先生の最後の場面が出ています。鈴木先生は96歳まで長生きされました。日本の仏教を世界に伝える仕事をされた方なのです。鈴木先生が90歳を過ぎた頃、あるお祝いの席でお弟子さんが質問されました。「先生、長生きの秘訣を教えてください」そしたら鈴木先生はこういわれています。「私は今、鎌倉のお寺の裏に住んでいて、いつも鎌倉の町に出るのに120段の石段を上がったり降りたりしなければなりません。私はこの石段を上がったり降りたりするときに、いつも足を置く石段だけを見ることにしています。是が長生きの秘訣です」と、おしゃっています。
 私たちだったら、先を見て「あと120段もあるのか」と、取り越し苦労するわけです。しかし、鈴木先生は今、今日を大事にして、一歩一歩、歩んだ。その結果が別に長生きしょうと思ったわけではないが、長生きする結果になりましたと、言うことらしいです。
 次に日蓮宗のお坊さんで、このかたは、89歳まで長生きしたのだそうですが、この人も、あるお祝いの席で、お弟子さんが、「先生、長生きの秘訣を教えてください」と質問しました。この先生は、「私は若いときからいろいろ研究して、長生きの秘訣を100以上知っています、しかし、どれ一つ実行しなかった」という事が長生きの秘訣です。こうおしゃっています。ということは、長生きに捉われないということです。最近フィンランド症候群と言って、医学界ではあまり話題にならず日が当たらないような感じで、かえってマスコミで広がった統計資料があります。時間の関係で詳しくは割愛させていだきますが、長生きしょうとか、健康になろうと厳しく指導するよりは、健康、長生きに捉われない自然体の方が予想外に病気の発生、がんの発症、等、健康に関しての指標はすべてよかったというのです。

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11.生死を越える道に進む
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